数学の歴史をのぞいて見ると、そこには信じられないような天才たちがたくさんいて驚かされます。数学はアイディアで織りなす学問ですから、時代を超え、国境を超え、人種や年齢という枠を超えて発展して行きます。古代には時代を2000年も先取りした人がいました。「群論」という現代数学の基本概念をノートに残した人は、20歳で決闘に倒れましたが、そのノートは数十年後に完全に解明されました。少年時代から天才振りを発揮して、数学のあらゆる分野で誰よりも早く、誰よりも深く数学を究めた人は77歳まで生きて天寿をまっとうしましたが、透徹したまなざしで現代数学の方向性を見定めたその後継者は、その半分しか生きられませんでした。数学が最も光り輝いた時代の天才たちの人となりと情熱、そのロマンやドラマを紹介しながら、数学の歩みをたどります。
<講師紹介> 中村 滋 (なかむら・しげる)
1943 年,戦時下の埼玉県に生まれ東京都で育つ。1967 年,東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。以来39 年間,東京商船大学(現東京海洋大学)で数学を教える。定年退職後の現在は,学習院大学非常勤講師,東京海洋大学名誉教授。日本フィボナッチ協会代表。数学教育の会の常連。著書は『フィボナッチ数の小宇宙』(日本評論社)、『微分積分学21講』(東京図書)、『数学の花束』(岩波書店)。
各回の内容
◆1回目 「デカルトとパスカル」 1月21日
17世紀前半のヨーロッパで活躍した2人から話を始めます。デカルトは記号代数学を完成させることにより「変数」概念を導入しました。これが厳密すぎた古代ギリシア数学に、自由に飛翔する翼を与えることになりました。近世哲学の始まりを告げる『方法叙説』出版の1637年は、同時に近世数学の始まりの年だったのです。16歳のときの画期的な「円錐曲線論」で衝撃的な数学界デビューをした天才パスカルは数学を究めると共に、計算機や真空論でも有名です。後半生をキリスト教に捧げて感動的な『パンセ』を遺し、わずか39歳の生涯を終えました。
◆2回目 「ニュートンとライプニッツ」 2月4日
デカルトの導入した当時の最新の数学をいち早くマスターした青年ニュートンとライプニッツは、新数学の威力をさらに強めて活かしきり、17世紀後半にそれぞれの微分積分学を作り上げてしまいます。時間微分を多用して物理現象を自由に扱える「流率論」を考案したのがニュートンです。曲線の極大・極小や接線をアルゴリズムで簡単に解けるようにしたのがライプニッツでした。現在の微分積分の記号はこのときにライプニッツが導入したものです。凡庸な学生が突然歴史に残る大天才に変身するニュートンの「奇跡の年々」、外交官としてパリに来て、夢中で最先端の数学を学び一気に微分積分学を作ってしまった神童ライプニッツの対照的な2人の天才物語です。
◆3回目 「オイラーとラグランジュ」 2月18日
18世紀に微分積分学は多方面に大きく発展をします。超多忙なライプニッツを強力に支えたベルヌーイ兄弟からオイラーへ、大陸では理想的な学問の継承がなされて、微分積分学は「解析学」として面目を一新します。1748年の名著『無限解析入門』を皮切りに出版されたオイラーの「解析3部作」の豊かな内容がそれを証明しています。この『入門』でオイラーは「関数」概念を数学の中心に据えました。これによって現代数学の礎が築かれたのです。解析の一分野「変分学」のオイラーによる名教科書の方法を見事に簡易化してデビューしたのが若いラグランジュでした。数論の分野でもこの師弟は時代を変革するような大きな仕事をしています。
◆4回目 「アーベルとガロア」 3月11日
目覚ましい発展を見せた18世紀の数学ですが、19世紀に入ると解析学の基礎理論にほころびが目に付くようになります。批判ののろしを上げたのはアーベルでした。こうして19世紀の大仕事、解析学の基礎付けが始まります。彼の最初の仕事は5次方程式に根(解)の公式は存在しないことを示したことです。でも彼は新しい道を示しながら26歳で病死しました。同じく5次方程式に根の公式が存在しないところから出発し、現代数学の基本概念である「群論」作り上げて、代数演算で根を見つけられる条件を明らかにしたのがガロアでした。余り意味のない決闘によってわずか20歳で死んだガロアの話です。
◆5回目 「ガウスとリーマン」 3月25日
19世紀前半の数学界に君臨し、数学の全分野に画期的な業績を残したのがガウスです。彼は史上最大の数学者と言ってよいでしょう。天才少年として領主から学資を支給されて何不自由なく過ごした少年時代から77歳で死ぬまで、頭脳全開で大きな発見をたくさんしました。ガウスの半分しか生きられませんでしたが、その透徹した思索で現代数学の方向付けをして、影響力の点では3本の指に入る数学者が後継者リーマンです。少年ガウスが発見した「素数定理」に全く新しい視点を導入してその40年後の解決に貢献し、ガウスの2次曲面論を拡充して歪んだ空間理論を作り上げ、定積分をきちんと定義し直すなど、華々しい成果を残しました。
各回のみのお申し込みも可能です。
◆1回目 「デカルトとパスカル」 1月21日
◆2回目 「ニュートンとライプニッツ」 2月4日
◆3回目 「オイラーとラグランジュ」 2月18日
◆4回目 「アーベルとガロア」 3月11日
◆5回目 「ガウスとリーマン」 3月25日
|