「ニヤリ」「ククッ」「ゲラゲラ」……マンガというのは、そういうものだと思い込んでいた。思い浮かぶマンガの筆頭は「おそ松くん」なのだから。9月11日に東京・有楽町のマリオン朝日ホールで開かれた「マンガ未来世紀」という催しで、マンガは自分が思っているものばかりではない、ということを痛感した。
第1部の荒俣宏さんといしかわじゅんさんとの対談は、手塚治虫文化賞の選考裏話のようなもので、今年の同賞大賞を獲得した吾妻ひでおさんの「失踪日記」についての話がおもしろかった。マンガの内容が全部実話ということは、この本の表紙にかいてあるらしいが、吾妻さんについて「行方不明になっていたらしいんだけど、最終的にクリエイターとしては描かずにいられなかったんだな。あれが結果的には取材旅行だったんだよね。でも、それで大賞取れて本当に良かったよねー」。仲間に対する愛情のようなものが感じられた。
第2部は、しりあがり寿さんと西原理恵子さんの画力対決。これ自体がマンガというくらいおもしろかった。司会者が出す手塚治虫マンガのキャラクターを、二人がその場で描いて会場の聴衆に見せるものだが、二人の個性が表れているうえ、言葉の掛け合いも楽しめ、会場の約800人が最もわいたときだった。
そして最後の第3部は、夏目房之介さんと萩尾望都さん、浦沢直樹さんとの鼎談。手塚作品から受けた影響や自分の創作態度などについて極めて学問的な話が飛び交い、マンガの奥深さを見せられた思いだった。
今や「漫画」や「まんが」ではなく「マンガ」なのだという。日本語の枠に収まりきれない世界文化として羽ばたいている、ということかもしれない。約5時間に及ぶ「マンガ未来世紀」に多くの人が集まり、熱心に見たり聴いたりするのを目の当たりにした今は、「マンガ」という表記がしっくりする。(S)
■手塚治虫文化賞10周年記念イベント「マンガ未来世紀」9月10日(日) 有楽町朝日ホール http://www.asahi.com/event/TKY200607180359.html