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テレビの平均視聴率が43.4%(瞬間最高視聴率は56%)にも上ったというWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝戦の日本対キューバ。大塚投手がキューバ最期の打者から三振を奪ってガッツポーズ。

ホームから駆けてきた捕手の里崎と抱き合う。内外野からマウンドの二人に駆けつけるイチローら野手陣。もちろん、ダッグアウトからも王監督らチームメイトが。みんな喜色満面。日本のプロ野球が世界一になった瞬間だ。街に号外が配られたように、列島が歓喜に包まれた。

日本での1次リーグを、韓国に敗れて2位通過した日本だったが、選手はもちろん、声援を送る国民も、アメリカでの2次リーグでは大リーグのオールスターをそろえたアメリカには勝てずとも、韓国やメキシコに勝って準決勝には進めるだろうと信じていたはずだ。それが、アメリカと大接戦の末に誤審で敗れ、雪辱を期して臨んだ韓国にも敗れ、準決勝進出が絶望的になった。

しかし、奇跡が起きた。2次リーグで全敗のメキシコが優勝候補アメリカを破ってしまった。失点率で上回った日本が、準決勝に進めることになった。そして、準決勝の相手は三度目の韓国。韓国に敗れ「屈辱的」と語ったイチローに見られるように、準決勝での日本チームはひとつになって屈辱を晴らそうとしていた。上原投手の快投、左翼手・多村の超ファインプレー、そして代打・福留の2点本塁打……。テレビ中継のアナウンサーが絶叫していた。「日本、決勝進出です」。

私見だが、多くの日本人は、いや選手たちだって、韓国を破った瞬間「これでいい」「これで十分だ」と思っていたに違いない。「目指すは世界一」とアメリカへ向かったものの、アメリカに勝てると信じていた人は多くはなかったはずだ。それでも、韓国に連敗すると思っていた人はいなかっただろう。プロ野球が発足して20年足らずの韓国に対して日本のプロ野球は70年の歴史があるのだ。先進国の自負があって当然だろう。アメリカに負けても、みな自分に言い訳ができる。「大リーグのオールスターを集めたアメリカだもの」と。だが、韓国に3度も負けてしまっては、日本の自負が砕け散る。もう負けるわけにはいかなかった。連敗したことによって、日本チームはさらに結束力を強めた。自負を守り抜くために。

この戦いが、野球というスポーツであったことは幸いだった。そして、スポーツの世界だけにとどまっていてほしいと願っている人は少なくないだろう。(T)