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ACCコラム  >  白い雪と黒いカラス
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東京とは思えない寒く白い世界。降り続く雪の中、慎重に足を踏み出す。黒い靴が沈み込む。一歩、また一歩。後ろに深さ5~6センチの足型の穴が残る。傘がサラサラと音を立てる。すぐ融ける雪ではなさそうだ。

026.jpg 1月21日。天気予報どおりに雪が降った。ただでさえ出勤する人の少ない土曜日。そのうえ、雪に足元をとられないよう気遣いながら歩かなければならないのだから、すがすがしい朝とはいかない。そのとき、目の前を黒いカラスが横切った。いやな思い出がよみがえり、身体が緊張した。

その1週間くらい前。出勤するため家を出て、最初の角を曲がろうとしたとき、ことは起こった。突然、後頭部に何かが当った。直後、道路わきのコンクリート塀に黒く大きなカラスが止まり、こちらを見た。「こいつかぁ」。互いの視線が一瞬交錯した。そのまま歩き続けながら考えた。カラスが襲ってきたのだろうか。いや、それならくちばしか足の爪を使うはずだ。後頭部の衝撃は、そんな鋭いものではなかった。

推測の結果はこうだ。カラスは、道路わきのコンクリート塀の後ろに立っている木に止まろうと舞い降りてきた。不注意者だったのか、運動神経の鈍い奴だったのか、予期せぬ人間の出現を避けることができず、足がぶつかってしまった。あの表情を思い出せば、カラスにとっても戸惑う出来事だったに違いない。それ以来である。黒い鳥が視界に入ると緊張する。

ところで、東京の雪は1日で6~7センチも積もり、翌日までに関東1都4県では700人を超すけが人を出した。1週間後まで、日陰には白い雪や灰色に汚れた氷塊が残った。そんな冬景色の中ではあったが、カラス事件のおかげか、雪にも氷にも足を滑らせることなく出勤を続けることができた。とはいえ、あのカラスともども、変な迎春ではある。(T)