10月5日は、そぼ降る雨が秋の訪れを感じさせる水曜日だった
ACC主催の「天満敦子 無伴奏ヴァイオリンコンサート」が、東京・築地の浜離宮ホールで開かれた。受け付け手伝いのために、会場入り口に待機していたときのことだ。入場者の波が治まった入り口付近で、係員と老婦人が深刻そうに話している。10メートルぐらい離れていたので、詳細は分からない。だが、婦人がバッグからはがきを出したところで、係員が「今日は10月5日の水曜日ですので、このコンサートとは違いますね」という声が聞こえた。係員に聞くと、婦人の持っていた招待券は、違うコンサートのものだったという。「日にちを間違えたんです。お気の毒ですね」と、係員。同感だった。「入れてあげようか」と相談しているときに、天満さんや関係者への挨拶のため会場に来ていたACC社長が、「どうしたの?」。
話を聞いた社長は、「それはかわいそうだ。空席はあるんだろう? 入れてあげよう」と言うなり、婦人のところへ。「どちらから、おいでですか? そうですか、横浜からわざわざですか。雨の中遠くからいらっしゃって大変でしたね。せっかくいらっしゃったのですから、よろしければ、お入り下さい。チケットがなくても結構ですから」。お礼を言いながら入場する婦人の顔には、さきほどまでの寂しそうな表情の代わりに笑みが浮かんでいた。
人の喜ぶ顔を見るのは嬉しい。雨の初秋であればなおさらだ。こちらの心も明るくなる。仕事が、いつもこうあればよいのだが……。(T)